ヨーロッパ史・西洋史
【内容紹介】
英文学を志す過程で「スペイン内戦」に邂逅した著者の50余年にわたるスペイン内戦研究の集大成。
著者は、スペイン内戦を「政治と人間の壮大なドラマ」と捉え、その現場に遭遇した「人間」に注目し、おびただしい数の回想録・体験記などを読み解く。
なかでも、時の文学者や知識人が戦時下に「自由と平和」を表明した国際旅団(人民義勇兵)の証言を集め、ここに証言文学の金字塔を打ち立てた。
著者は言う。
──苦境に立たされたスペイン共和国を救援するために、50数ヵ国から約4万人の義勇兵が国際旅団を編成した。
その中の「第15国際旅団」にたった一人の日本人義勇兵、ジャック白井がいた。
彼はマドリード近郊のブルネテ戦線で戦死するが。
1937年10月4日付の週刊旅団新聞『自由のための義勇兵』第1面に、ジャック白井の写真と「追悼詩」が載った。
その左には「ガルシア・ロルカ殺害の目撃談」という記事も掲載されている。
人類の愚行の葬列ともいうべき戦争の歴史、かのアリストテレスの「戦争の目的は平和である」の言葉が、今さら真実味が帯びてくる。
そういえば、ヨーロッパの70年代、80年代の反核・反核戦運動には、「ゲルカ・ヒロシマ・ナガサキ」の文字がいつも先頭のプラカードに大きく描かれていた──と。
【目次】
はじめに──「私のスペイン学」の備忘録として
I スペイン内戦とは何だったのか──自由と抵抗のドラマツルギー
1 米西戦争の惨敗と「九八年の世代」
2 アルフォンソ一三世の治世 25
3 モロッコの動乱と「悲劇の一週間」の勃発
4 第一次世界大戦の勃発
5 「一九一七年の危機」
6 プリモ・デ・リベラの独裁政治
7 ブルボン王朝スペインの終焉と第二共和国の誕生
8 「改革の二年間」
9 四面楚歌の新政権
10 「暗黒の二年間」
11 「アストゥリアス一〇月革命」
12 「人民戦線内閣」の誕生
13 軍事叛乱の挫折と内戦の勃発
14 フランコの作戦
15 世界的に広がった共和国支援運動
16 スペイン不干渉委員会
17 マドリードの危機と国際旅団の初陣
18 バルセロナの市街戦──「内戦の中の内戦」
19 叛乱軍におけるフランコの台頭
20 フランコの政党統一令の公布と第一次フランコ内閣の成立
21 背水の陣を敷く共和国陣営、そして内戦の終結
II スペイン人とスペイン内戦
1 ガルシア・ロルカのスペイン
2 ドロレス・イバルリ(パシオナリア)
3 マルガリータ・ネルケン 209
4 ゲルニカの影──「ゲルニカをめぐる七つのエピソード
5 バルセロナ人民オリンピック異聞
6 映画<<メキシカン・スーツケース>>がもたらしたスペイン内戦の真実
7 妖精は「モグラ」のマノーロだった
──福田善之の<<壁の中の妖精>>をめぐって
III イギリス人・アメリカ人とスペイン内戦
1 ナン・グリーン
2 トム・ウィントリンガム
3 ラルフ・ベイツ
4 スティーヴン・スペンダー
5 イギリス人義勇兵について
6 イギリス知識人のスペイン内戦敗北の受容
7 「ディーセンシィ」が意味するもの
8 ミルトン・ウルフ
9 アーネスト・ヘミングウェイ
IV 日本人とスペイン内戦
1 ジャック白井のスペイン内戦
2 わが国初のスペイン内戦関係書
3 前スペイン駐在公使青木新
4 スペイン駐在公使矢野眞
5 日本の新聞報道に見るスペイン内戦
6 市井の日本人のスペイン内戦に関する反応
7 スペイン内戦とノモンハン事件
あとがき──サマリーとしてのスペイン内戦
【著者略歴】
1942年札幌で生まれる。
北海道大学文学部英文科卒業、東京都立大学大学院英文科修士課程修了、一橋大学社会学博士、ロンドン大学客員研究員、ケンブリッジ大学客員研究員、マドリード大学客員研究員、現在アジア・ユーラシア総合研究所評議員。
武道家(合気道6段、居合道4段、杖道3段)。書評家、評論家。
主要著書:『スペイン戦争と日本の新聞報道』『スペインへの道』『青春のスペイン戦争』『スペイン未完の現代史』『スペイン通信』『スペイン戦争』『スペイン国際旅団の青春』『幻のオリンピック』『ジャック白井と国際旅団』『スペイン通史』ほか多数。