政治
【内相紹介】
外交は通常言葉を介して行われる。
「安全保障(security)の政治」について、言語行為としての側面から体系的分析を試みたのがコペンハーゲン学派の「安全保障化」論である。
過去四半世紀の研究蓄積を再検討し、安全保障化論の意義と限界を明らかにする。
【目次】
序章 安全保障化論の構図:安全保障化論の背景/コペンハーゲン学派の安全保障化論/安全保障化をめぐる論点/国際関係理論の中での位置づけ
■第1部 安全保障化の諸相
第1章 気候安全保障の安全保障化?:問題の所在/安全保障化/気候安全保障と日本/安全保障化にとっての意味
第2章 HIV/AIDSの安全保障化 :安全保障化の理論とHIV/AIDS 問題/80年代のアメリカ社会とAIDS 問題/国家安全保障上の脅威としての認識醸成
第3章 安全保障化としての英国の対中脅威認識形成過程:英中「黄金時代」の演出と緊張関係の胚胎/新空母のインド太平洋展開計画をめぐる日中の反応/安全保障化としてのCSG21 のインド太平洋展開
第4章 安全保障化とメディア:気候変動の安全保障化と報道/分析の方法/内容分析の実践と結果
■第2部 安全保障化論の課題と展望
第5章 コペンハーゲン学派の批判的再検討:コペンハーゲン学派安全保障論--リアリズムとの対比/EU拡大の過程における「安全保障化」/コペンハーゲン学派の安全保障概念の評価
第6章 ホッブズにおける安全保障政策の基本原理 :ブルにおけるホッブズの国際関係論/ホッブズにおける安全保障政策および国家の基本原理
第7章 経済における安全保障化の逆説:「経済安全保障」とは何か/経済の分野における安全保障化とその「逆説」/発語内行為としての安全保障化とその「沈黙」
第8章 言語行為としての安全保障化:言語行為としての安全保障化への批判/コペンハーゲン学派による安全保障化論の限界と特徴/発語内行為としての安全保障化の理論
第9章 安全保障化理論の再構成:安全保障という不定な概念/安全保障化理論/安全保障化理論と言語哲学/オースティン言語哲学と政治学/安全保障化理論の再構成/再構成された安全保障化理論の意義
第10章 戦後日本の「自己安全保障化」防衛政策:本章の理論仮説/日本国憲法の世界観/日本国憲法の制定/専守防衛戦略/基盤的防衛力構想/結語--脱・自己安全保障化から「理想的憲法状況」へ