日本文学
【内容紹介】
業を負う男たち、旅路の果てに出会うものは
兄さん、今からあんたを殺しに行くよ--。
大阪ミナミの廃院に独り住む三宅紘二郎のもとに、1通の絵葉書が届いた。
葉書に書かれた漢詩に、紘二郎の記憶の蓋が開く。
50年前、兄の征太郎は紘二郎が愛した女とその娘、さらには寝たきりの父親を斬殺した。
なぜ今頃、と思いながらも、閉じ込めていた怨みを止めることはできなかった。
絵葉書が兄の居所を示唆している。
紘二郎は兄を殺すため、大分に向かう決意を固める。
思い出の旧車を手に入れ、旅に出ようとする紘二郎の前に現れたのは、中古車店の元店長を名乗る金髪の若者・リュウだった。
紘二郎の買ったコンテッサはニコイチの不良車で危険だと言う。
必死に止める様子にほだされ、紘二郎は大分への交代運転手としてリュウを雇うことに。
孫ほど年の離れた男との不思議な旅が始まった。
かつて女と暮らした町、リュウと因縁のある男との邂逅、コンテッサの故障……道中のさまざま出来事から、明らかになってゆく二人の過去。
あまりにも陰惨な心中事件に隠された驚きの真相とは。
リュウの身体に隠された秘密とは--? 旅の果て、辿りついた先で二人の前に広がる光景に、心揺さぶられる感動作。
【編集担当からのおすすめ情報】
本当のハッピーエンドとは何か。
家族の業や、女性の情念の描き方に定評のある遠田潤子さん。
本作でもその力はいかんなく発揮されつつも、単行本刊行時、もっとも反響があったのは、物語のラスト、主人公二人の前に広がる光景の美しさでした。
文庫化にあたり、小説家で医師でもある久坂部羊さんの解説を収録。
ラストシーンを受けて、本当のハッピーエンドとは何か、という観点から本作を掘り下げてくださっています。